もつ煮というと、牛や豚の内蔵をぐつぐつ煮込んだものをイメージされる方がほとんどでしょう。
甲府の「鳥もつ煮」は小鍋で手早く味付けします。使うのは、コリコリした砂肝、しこしこしたハツ、やわらかいレバー、ぷちっと弾けるキンカン(産まれる前の玉子)の4種類。味付けは醤油と砂糖だけです。
余分なたれは捨てる。それが美味さの秘けつ
少量のタレともつを入れ、火が通ったら余分なタレは捨ててしまいます。
電気冷蔵庫がなかった昭和25年ごろ、もつから出るアクを捨てるためとはいえ、白砂糖入りのたれを捨てるのは大英断だったはずです(現在は温度管理が行き届いているので、アクはほとんど出ません)。
高価な白砂糖をふんだんに使って甘辛い鳥もつは、大変ぜいたくな味付けでした。
仕上げはスピード勝負!
鍋に残ったタレを強火で煮詰め、飴のようにして鳥もつをコーティング。これを「照り煮」と呼んでいます。火が弱ければ汁がたっぷり残りますし、強すぎると焦げます。単純な料理だけに、職人の技術で仕上がりに差が出る部分です。
じっくり焼いたウナギの蒲焼がしっかりタレをまとっているように、鳥もつを甘辛く包み込むようしています